日本はスペインに比べて仕事がしやすい
ダニエル氏:「あります。
私が大学生のころの話ですが、日本では考えられないことですが、公務員の友人とコーヒーを飲んでいるときに、いきなり友人が『給料が入っているか確認してくる』と言って席を立ったことがありました。
公務員がですよ?
他にも、「あいつが報酬を払ってくれない」というような話をよく聞きました。
そこから、私はスペインでは仕事をしても一々喧嘩しないとお金を払ってもらえないんじゃないか、スペインでは働けない、と思いました」
-たしかに、昔からスペインはそれほど景気がいい、というイメージはありませんでしたが…
ダニエル氏:「その点で、日本は本当に天国だと思います。
お互いに、お金はしっかりと払う習慣は、日本だけだと思います。
日本とそれ以外というくらい、文化が違います。
それが原因で、貿易でも日本はどんどん外国勢にやられているのではないでしょうか。」
-お金の感覚は、スペイン全土でおおむね同じなのでしょうか?
ダニエル氏:「地域差はあります。
大まかにいうと、北は真面目で南はそうでもない、という感じですね。
もちろん、皆はそうだと言えませんけど。
それと、バスク地方やその他2,3の地域もお金のことはきっちりしています。
私が関わっているサン・セバスチャン国際映画祭も、おかげさまできちんと報酬を払ってもらっています。
でも、地域によって、私の地元であるマドリッドでは、昔からの知り合いくらいからしか仕事は受けていません。」
-やはり当然ですが、スペインといっても、いろいろ違いがあるのですね。
ダニエル氏:「政治の世界も、すべての政党にわいろの文化がありますが、面白いことにバスクだけはないと言われています。
もっともスペイン人は、それはばれてないだけで、ないわけがないといっていますが(笑)。」
ダニエル氏から見たバスク地方
-今バスクのお話が出てきましたが、バスク地方は独特の文化や気質があるようですね。
ダニエル氏:「地理的な要因があると思います。
歴史的に、スペインは南から多民族や文化が混ざってきましたが、バスク地方はスペインの中でも北部にあり、かつ山に囲まれていますので、そういった影響を受けてこなかったからでしょう。
昔ながらのスペイン人、という感じです。」
-イタリアのように、北と南で気質が違うのですね。
ダニエル氏:「そうとも言えますね。」
翻訳という仕事の価値と今後の夢
-話を戻しますが、ダニエルさんの翻訳の仕事について詳しくお話をきかせていただけますか?
ダニエル氏:「今やっている翻訳という仕事に関しては、自分にはものすごい勉強になっています。
常に自分の知らない世界が開いていく感じがします。
一番向いている仕事だと思います。
日本の本をスペイン語に翻訳することで、スペインのみなさんに、自分じゃないと紹介できないものを紹介しているという自負がありますので、すごく気持ちがいいです。
やはり原文を書いて作家だけでなく、翻訳になると、原文の精神と様式を護りながら、翻訳者の出せる味があります。
映画関連の本に関しても、スペインで知られていない日本映画のよさを紹介できるのは光栄だと思っています。
特に自分が翻訳した本を見ればわかりますが、かなりマニアックなものが多いです。
映画に強い自分だからできる、普通の翻訳業者では出せない味が出せます。
そして、自分で書く本も、翻訳するものも、自分が好きな内容のもの本しか翻訳してやっていません。」
-ダニエルさんが携わられた本は、ご自身の情熱が詰まっているのですね。
ダニエル氏:「本格的に翻訳の仕事を始めたのは、今から6年くらい前からです。
やっと今の好きな仕事につけた、という感じです。」
-ダニエルさんにとって、ようやくやりたい仕事をすることができたのですね。
ダニエル氏:「子供の頃から文書を書くのが好きでした。
でも、自分の好きなことで食べられるようになるまでは、長くかかります。
それこそ何十年もかかる場合があります。
だからこそ、今はひとつひとつの仕事を大事に、情熱をもってあたることができていると思います。
そういう意味では、いきなり最初から好きなことで食べられるというのは、恵まれている人でないと無理なことかもしれないと思います。
遅かったけど、今の自分は恵まれていると思います。」
-今後やりたい仕事があれば教えてください。
ダニエル氏:「いずれ、短編集でもいいので、日本で自分の本を出せたらいいと思っています。
書きたいテーマはいろいろありますし、ものによっては、すでに何ページも書き始めているものもあります。」
-日本とスペインをよく知り、その架け橋をされているダニエルさんがどんなものを書かれるのか、ぜひ読んでみたいと思いました!